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【一時帰休とは?】給与計算方法から実施手順・注意点をご紹介!

「業績悪化に備えて、休業措置について知っておきたい…」

「最近よく聞く、一時帰休ってなんだろう?」

新型コロナウイルスの影響もあり、一時帰休について耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。 

本記事では一時帰休について、以下の内容を解説します。

  • 一時帰休とは?
  • 一時帰休中の賃金について知っておくべきこと
  • 実施する際の注意点 
  • 実施の手順

苦しい時期も前向きに乗り越えるために、一時帰休への理解を深めていきましょう!

目次

一時帰休とは?

一時帰休とは、業績不振などで経営難に陥った企業が、従業員を在籍させたまま一時的に休業させる措置です

売上減少にともない社内の業務量が減った場合、一時帰休により業績回復までの間の人件費を抑えられます

その他、一時帰休のポイントは下記の通りです。

  • 従業員の雇用契約は変わらない
  • 休業期間の終了後、会社に復帰してもらうことを前提とする

 

平均賃金の60%以上の給与を支払うことが実施条件です!

労働基準法26条では、使用者の都合により従業員を休業させた場合、休業させた日について、最低でも平均賃金の60%以上を休業手当として支払うことが定められています

人件費削減を目的とした一時帰休は、使用者の都合によるものとされるため、労働者へ休業手当を支払うことが必要です。

休業手当の支払いはすべての事業主が負うべき責任なので、従業員側からの申請は必要ありません。

しかし、下記のように不可抗力な理由による休業の場合には、使用者の都合ではないとされ、例外的に休業手当の支払い義務が生じないこともあります。

  • 天災の影響
  • 従業員の安全・健康を守るために必要な理由がある場合
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一時帰休中の賃金について知っておくべきこと

一時帰休中の賃金を考える際に知っておきたい、休業手当の計算方法利用できる助成金について解説していきます。

  • 休業手当の計算方法は2種類
  • 雇用調整助成金が利用できます!

 

休業手当の計算方法は2種類

休業手当の計算をする際、まずは平均賃金を算出することが必要です。

算出方法は原則最低保証額の2種類あり、どちらか高い方が平均賃金として適用されます。

平均賃金を算出した後に下記の式に当てはめ、休業手当額を導き出しましょう!

【休業手当の計算式】
平均賃金×60%×休業日数
 
① 平均賃金を原則から求める場合

労働基準法第12条で、平均賃金の計算方法は「事由が発生した日(休業初日)より以前の3ヶ月間において、対象となる労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額」と定められています。

【平均賃金の計算式(原則)】
事由発生日以前の3ヶ月間の賃金総額÷その歴日数
【休業手当の計算例】

次のように月給制で働く従業員が休業する場合について、平均賃金休業手当をそれぞれ算出してみましょう。

前提条件
基本給 25万円
賃金締切日 毎月20日
事由発生日(休業初日) 8月10日
休業日数 20日
事由発生日以前3ヶ月間の状況
7月分(6/21~7/20)の賃金:基本給24万円、通勤手当1万円
6月分(5/21~6/20)の賃金:基本給24万円、通勤手当1万円
5月分(4/21~5/20)の賃金:基本給24万円、通勤手当1万円、残業手当1万円

この場合、平均賃金と休業手当の計算は、それぞれ下記の通りになります。

平均賃金=(25万円+25万円+26万円)÷(30日+31日+30日)=8,352円*

*…50銭未満は切捨て、50銭以上は切上げが原則。

休業手当=8,352円(平均賃金)×60%×20日(休業日数)=10万224円

賃金の総額には、通勤手当をはじめとした月ごとの各種手当を含むようにしましょう。

② 平均賃金を最低保証額から求める場合

月給制以外の給与体系やシフト制で働く労働者の不利益を防ぐため、平均賃金には最低保証額が設定されています。

最低保証額の計算方法は、「3ヶ月間に支給された賃金総額を、労働者が実際に勤務した日数で割った額の60%」です。

【平均賃金の計算式(最低保証額)】
事由発生日以前の3ヶ月間の賃金総額÷労働者が実際に勤務した日数×60%

この最低保証額を原則で算出した額と比較し、高い方その従業員の平均賃金として適用されます。

【休業手当の計算例】

次のように日給制で働く従業員が休業する場合について、平均賃金休業手当をそれぞれ算出してみましょう。

前提条件
日給 8,000円(通勤手当1日500円)
賃金締切日 毎月20日
算定事由発生日(休業初日) 8月10日
休業日数 20日
事由発生日以前3ヶ月間の状況
7月分(6/21~7/20、労働日数10日)の賃金:基本給8万円、通勤手当5,000円
6月分(5/21~6/20、労働日数15日)の賃金:基本給12万円、通勤手当7,500円
5月分(4/21~5/20、労働日数10日)の賃金:基本給8万円、通勤手当5,000円

まず平均賃金を求めるために、原則・最低保証額での計算をそれぞれ行います。

 平均賃金(原則による計算)=(8万5,000円+12万7,500円+8万5,000円)÷(30日+31日+30日)=3,269円

 

 平均賃金(最低保障額による計算)=(8万5,000円+12万7,500円+8万5,000円)÷(10日+15日+10日)×60%=5,100円

この場合、最低保証額のほうが高くなるので、この場合の平均賃金は5,100円になります。

よって、休業手当は下記のように求められます。

休業手当=5,100円(平均賃金)×60%×20日(休業日数日)=6万1,200円

 

雇用調整助成金が利用できます!

一時帰休を実施する際には、雇用調整助成金を利用できます雇用調整助成金とは、下記のような事業主が国から受給できる助成金制度です。

  • 対象…事業活動の縮小を余儀なくされ、休業などの雇用調整を実施して雇用維持を図る事業主

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、緊急対応期間と特例措置が設けられています。

  • 緊急対応期間…令和2年4月1日~令和3年11月30日

緊急対応期間中は、助成率の拡大・受給要件の緩和などの措置を受けられます。

  通常時

緊急対応期間中

(2020年4月1日~2021年11月30日)

対象となる事業主 経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主
生産指標要件 3ヶ月10%以上減少 1ヶ月5%以上減少
助成率

中小企業:2/3

大企業:1/2

中小企業:4/5

大企業:2/3

※業況特例、地域特例(令和3年5月~11月) 中小・大企業 4/5、10/10(解雇等を行わない場合)

被保険者期間 6ヶ月以上 要件の撤廃
休業規模要件

中小企業: 1/20

大企業:1/15

中小企業:1/40

大企業:1/30

※業況特例等対象の中小企業が最低賃金を一定以上引き上げる場合、10月~12月の休業について要件緩和

(詳細は、厚生労働省「雇用調整助成金ガイドブック」でご確認ください。)

雇用調整助成金を受給するには、各要件を満たす必要があります。

受給要件は定期的に改定されるので、申請を行なう際にはその時点での要件をよく確認するようにしましょう。

実施する際の注意点 

一時帰休を実施する際に、注意したいのは下記の3点です!

  • 対象が非正規労働者の場合
  • 年次有給休暇の取り扱い
  • 期間中の副業について  

 

対象が非正規労働者の場合

労働基準法の第26条では、休業手当の支払い対象を正社員に限定していません。

そのため、パート・アルバイトなどの非正規雇用の従業員に対しても、会社都合で一時帰休を命じる場合には休業手当を支払います

ただし、対象が派遣社員の場合は、派遣元の事業主が休業手当を支給する点に注意しましょう。

また、雇用調整助成金はすべての雇用形態が一律で対象となっており、「雇用保険の加入期間が6ヵ月以上」という条件さえ満たしていれば、受給申請が可能です。

年次有給休暇の取り扱い

有給休暇は原則として、労働義務のある日に労働者が取得できる休暇です。

一時帰休の実施期間は労働義務がないので、事業主が有給取得を認める義務はありません

しかし、会社都合の措置による従業員の負担を考慮し、希望者には有給休暇の取得を認めるなど、柔軟な対応を心がけましょう。

実施期間中の副業について  

収入が減る一時帰休中には、従業員から副業の許可を求められるかもしれません。

副業を認めれば従業員の暮らしを守ることができ、反発の防止にも繋がります。

一時帰休中に限っては認可するなど、従業員に寄り添いながら判断することが望ましいです。

お問い合わせはこちら

実施の手順   

実施の手順は、下記の4ステップです!

  1. 実施条件を明確にする
  2. 対象者・実施期間を設定する   
  3. 期間中の条件を決定する
  4. 実施のための説明をする

 

① 実施条件を明確にする

一時帰休は無期限で従業員を休ませるものではなく、あくまで一時的な休業です。

下記のような見通しを立てた上で休業に措置に入ることで、従業員を安心させることができます。

  • 売上見込みや行政による休業要請など、判断材料を決め、休業措置をとる基準を設ける
  • 休業期間の目安を明確にする
  • 休業期間に見込める業績回復の見込みを予測する

従業員に納得して休んでもらい、一時帰休の正当性を証明するためにも、実施条件を明確にしましょう。

② 対象者・実施期間を設定する   

実施条件の内容に基づいて、対象者実施期間を決定します。

対象者を選ぶ際には、下記の点に留意しましょう。

  • 国籍や性別など、差別的な理由で選ばない
  • 休業しない従業員への負担を考慮し、代理の従業員による業務が可能な職種や部署から対象者を選ぶ

実施期間の設定では、対象者の給与面での負担を考慮しましょう

休業の効果が期待される範囲で、最短期に設定することが重要です。

実施期間は助成金の受給条件にも関係する点なので、条件を確認しながら期間を検討してください。

③ 期間中の条件を決定する

対象者・実施期間が決まったら、次に休業期間中の条件を明確にしましょう。

一時帰休は、対象者に戻ってきてもらうことを前提とした措置です。

人材流出を防ぐためにも、従業員ごとに寄り添った条件を考えることが重要になります。

たとえば一時帰休中の休業手当については、平均賃金の60%以上であれば、支給額の上限はありません

法定額を満たすだけではなく、従業員ごとに見合った額を確保したり、副業を許可するなど適切な条件を提示しましょう。

④ 実施のための説明をする

これまでの準備が整ったら、従業員に説明した上で一時帰休を実施します。

あらかじめ労使協定を確認して、一時帰休に関する取り決めを確認しましょう。

  • 取り決めがあった場合…労使協定の内容に従って協議や説明を行う
  • 取り決めがない場合…従業員に休業の必要性を説明し、労働組合もしくは労働者の代表と労使協定を締結する

従業員の不安を軽くするために、実施について説明することはとても大切です。

労使協定は助成金の申請に必要なので、大切に保管してください。

まとめ

一時帰休について、下記の流れで説明してきました。

  • 一時帰休とは?
  • 一時帰休中の賃金について知っておくべきこと
  • 実施する際の注意点 
  • 実施の手順

一時帰休は、業績不振など苦しい状況下での雇用維持に効果的な措置です。

実施の際には事業主として従業員の不安に寄り添い、適切なサポートを心がけましょう。

不振時にスムーズな措置を行えるように、日頃から社内制度を整えて準備しておくと安心ですよ。

わからないことがあれば、弊社までお気軽にご相談ください!

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