
確定申告をする人なら誰もが手にする確定申告書。
ただし一口に確定申告書と言っても、あなたが確定申告する内容によって第一表から第五表まであります。
一般的によく利用するのは、第一表と第二表です。
しかし今回紹介するのは、第三表。
該当者はそこまで多くありませんが、その分いざ提出することになったとき、迷ってしまいがちです。
そこで本記事では次の3つの疑問を軸に紹介していきます。
- 確定申告の種類とは?
- 【第三表】の用途と該当する所得とは?
- 【第三表】の記入項目とは?
まずは“あなたは第三表を提出するべきなのか?”という点だけでも確認してみませんか?
もくじ
●疑問その1…まずはおさらい!確定申告書の種類一覧
確定申告書には第一表から第五表まであります。
それぞれどんな差異があるのか、下表でおさらいしておきましょう。
種類 | 主な内容 | 名称 | あわせて提出する書類 |
---|---|---|---|
第一表 | 納税者の基本情報 収入、所得金額など税金の計算 | 確定申告書A 確定申告書B | - |
第二表 | 第一表の明細 住民税や事業税に関する事項 | 確定申告書A 確定申告書B | - |
第三表 | 分離課税対象の所得税など | 確定申告書(分離課税用) | 確定申告書B(第一表・第二表) |
第四表 | 損失申告対象の申告額など | 確定申告書(損失申告用) | 確定申告書B(第一表・第二表) |
第五表 | 修正申告する際の修正前の情報など | 修正申告書 | 確定申告書B(第一表) |
確定申告書AとBの違い
確定申告書AとBの違いは、確定申告する所得の種類によって異なります。
- 確定申告書A…「給与所得」「雑所得」「配当所得」「一時所得」の4種のみ&予定納税がない場合
- 確定申告書B…全ての所得に利用可能
基本的には確定申告書Bを使うと考えて問題ありません。
確定申告書Aを使う主な例は、サラリーマンが会社で年末調整ができなかった次のような所得がある場合です。
- 生命・損害保険の一時金
- 公的年金
- 原稿料など多少の副収入
- 株式の配当金
●疑問その2…第三表は【分離課税】を申告するための書類!
確定申告書の概要がつかめたら、いよいよ確定申告書「第三表」について踏み込んでいきます。
結論から言うと、確定申告書の第三表は分離課税に該当する所得を申告する場合に利用します。
ここからは次のトピックを中心に確認していきましょう。
- 総合課税と分離課税について
- 申告分離課税に該当する所得
総合課税と分離課税について
確定申告をする際の課税方式には、
- 総合課税
- 分離課税
上記の2種類があります。
総合課税は対象の所得すべてを合計した金額が課税の対象となる課税方式です。
一方、分離課税は他の所得と一緒にせず、それぞれ個別に税率をかけて課税されます。
源泉? 申告? 【分離課税】は2種類アリ
分離課税にはさらに種類があることをご存知でしょうか?
- 源泉分離課税
- 申告分離課税
上記の2種類に分かれます。
源泉分離課税は分離課税対象の所得を、あらかじめ源泉徴収して受け取る方式のものです。
受け取った時点で税額分は差し引かれているので、とくに別途で確定申告をする必要はありません。
源泉分離課税に該当する所得の具体例は、以下に記載しています。
一方、申告分離課税はそれぞれ個別に税率をかけて課税額を割り出すので、確定申告が必須です。
以下では申告分離課税に該当する所得(=第三表に記載する所得)を1つずつ確認していきましょう。
申告分離課税に該当する7つの所得
申告分離課税に該当する所得は、主に次の7種類です。
- 譲渡所得
- 雑所得
- 山林所得
- 利子所得
- 上場株式配当所得(※選択制)
- 事業所得
- 退職所得
①:譲渡所得(株式、不動産など)
申告分離課税に該当する譲渡所得は、主に以下のような資産を譲渡した場合に発生します。
- 株式
- 不動産(土地・建物など)
- ゴルフ会員権
譲渡所得の計算方法は次のとおりです。
課税譲渡所得金額=収入金額 ー(取得費 + 譲渡費用)ー 特別控除額*
税額は下記のように算出が可能です。(※)
- 長期譲渡所得(所有期間が5年超)…課税長期譲渡所得金額×15%
- 短期譲渡所得(所有期間が5年以下)…課税短期譲渡所得金額×30%
※2013年~2037年までは復興特別所得税として「各年の基準所得税額×2.1%」とあわせて申告・納付します。
②:雑所得(先物取引、FX取引など)
先物取引やFX取引等で生じた所得は「先物取引に係る雑所得等」として計上され、申告分離課税の対象となります。
もし損失が出てしまった場合でも、「先物取引に係る雑所得等」同士(先物取引とFX取引など)でなら損益通算が可能です。
別の所得との損益通算はできないので、気をつけてくださいね。
また損失の度合いが大きくて1年間で控除しきれなかった場合は、翌年以後3年間にわたって繰越控除ができます。
③:山林所得
山林所得に計上される場合も、申告分離課税の対象です。
山林所得に該当する主なケースは、下記をご覧ください。
- 山林を伐採して譲渡する
- 立木(=地面に生えたまま)の状態で譲渡する
例外として、山林を山ごと譲渡した場合の土地は「譲渡所得」、山林の取得後5年以内の譲渡は「事業所得」として計上されるので、注意しましょう。
④:利子所得
- 預貯金
- 公社債の利子
- 合同運用信託
- 公社債投資信託
- 公募公社債等運用投資信託
上記のものは利子所得に含まれますが、源泉分離課税のため確定申告の対象ではありません。
ただし例外として、「2016/1/1以後に支払いを受ける特定公社債*等の利子等」については、申告分離課税の対象となります。
また申告分離課税の対象とはいえ、確定申告をしないという選択も可能です。
ちなみに利子所得には非課税制度が2つあります。
詳細は下記をご覧ください。
*2013年~2037年までは復興特別所得税として「各年の基準所得税額×2.1%」とあわせて申告・納付するので、実際の税率は20.315%となります。
⑤:上場株式配当所得(※選択制)
上場株式配当所得の課税方式は…
- 総合課税
- 申告分離課税
上記のどちらかを選択できます。
ただし申告分離課税を選択した場合、配当控除を利用することはできません。
*2013年~2037年までは復興特別所得税として「各年の基準所得税額×2.1%」とあわせて申告・納付するので、実際の税率は20.315%となります。
⑥:事業所得
- 株式等を譲渡した際の所得
- 先物取引に係る所得
上記の所得を事業規模で得た場合は事業所得として計上され、申告分離課税の対象となります。
株式等の譲渡に係る主な具体例は、次のとおりです。
- 特定口座制度*
- 上場株式等に係る譲渡損失、配当所得等との損益通算
- 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
- 特定管理株式等が価値を失った場合の譲渡所得の課税の特例
- NISA(少額投資非課税制度)
- ジュニアNISA
*特定口座制度は証券会社等が上場株式等の譲渡損益を計算し、申告を簡易にする制度のこと。
*2013年~2037年までは復興特別所得税として「各年の基準所得税額×2.1%」とあわせて申告・納付するので、実際の税率は20.315%となります。
⑦:退職所得
退職時に発生する退職所得は源泉分離課税のため、原則として確定申告の必要はありません。
ただし例外として「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合、申告分離課税の対象となり、確定申告をする必要があります。
退職所得に該当するのは、主に次の3つです。
- 勤務先から受け取る退職手当
- 社会保険制度による退職一時金
- 生命保険会社 or 信託会社による退職一時金
*2013年~2037年までは復興特別所得税として「各年の基準所得税額×2.1%」とあわせて申告・納付するので、実際の税率は20.42%となります。