
昨今、新しい働き方として注目されているテレワーク。
テレワークを新規導入・継続すれば働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)に申し込めるのをご存知ですか?
助成金を申請して審査に通れば、コストの削減だけでなく、整った職場環境をアピールできるというメリットがあります。
テレワークコースに設定されているのは下記の2種類。
- 一般用
- 新型コロナウイルス感染症対策用
本記事では一般用のテレワークコースについて、令和2年度分の内容*を解説します。
今年度の申請受付はすでに終了していますが、次のチャンスに備えて概要を予習しておきましょう!
*…申請受付終了を受け、本記事では予定されていた期日の記載部分に取り消し線を引いています。現在は適用されない期日ですのでご注意ください。
もくじ
テレワークコースの内容
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)とはどのような助成金なのでしょうか?
内容を以下の順で確認していきましょう。
- 目的
- 新しくなった点
- 対象となる事業主
目的
働き方改革推進支援助成金は、令和2年度より「時間外労働等改善助成金」から名称変更された助成金です。
そのうちのテレワークコースでは、下記の3点を目的としています。
- 時間外労働の制限
- その他の労働時間等の設定の改善*
- 仕事と生活の調和の推進
*…各事業場における労働時間などの規定を、労働者の生活・健康に配慮しながら多様な働き方に対応させ、より良いものにしていくことを指す。
これらの実現を目指して、在宅またはサテライトオフィス(=企業や団体の本社・本拠地から離れた場所に設置されたオフィスのこと)でのテレワークに取り組む中小企業事業主に、テレワーク実施にかかった費用の一部が助成されます。
交付申請の受付期間は令和2年4月1日〜令和2年12月1日です(今年度の受付は終了)。
支給対象事業主数は国の予算額に制約されるため、受付の締め切りが早まる可能性があるので注意しましょう。
新しくなった点
本助成金は令和2年5月1日に以下の見直しが行われ、制度内容が拡充されました。
- 1人当たりの上限額および1企業当たりの上限額を倍増
- 受け入れている派遣労働者がテレワークを行う場合も対象
- 成果目標のうち、労働者の月間平均所定外労働時間数を前年と比較して5時間以上削減させる目標を廃止
内容 | 見直し前 | 見直し後 |
1人当たりの上限額 | 20万円 | 40万円 |
1企業当たりの上限額 | 150万円 | 300万円 |
対象労働者の規程 | 自社の社員のみ |
受け入れている派遣労働者がテレワークを行う場合も対象* *派遣元事業主が、その派遣労働者を対象として同時期に同一措置につき助成金を受給していない場合に限る。 *少なくとも対象労働者の1人は直接雇用する労働者であることが必要。 |
成果目標のうち、「労働者の月間平均所定外労働時間数を前年と比較して5時間以上削減させる」の規程 | 含まれる | 廃止 |
(参照:厚生労働省作成リーフレット「働き方改革推進支援助成金」のご案内(テレワークコース))
(参照:厚生労働省作成リーフレット「働き方改革推進支援助成金」のご案内(テレワークコース)(旧版))
対象となる事業主
支給の対象となるには、下記の3点をすべて満たす事業主であることが必要です。
- 労働者災害補償保険の適用事業主であること
- 業種・資本・労働者の範囲条件を満たしていること
- テレワークを新規で導入・または継続して活用する事業主であること
①:労働者災害補償保険の適用事業主であること
労働者災害補償保険(労災保険)とは、労働者が業務上・通勤上の災害により負傷したり、死亡した場合に、労働者やその遺族のために必要な保険給付を行う制度です。
労働者を1人でも使用する事業*は、適用事業として労災保険法の適用を受けることになり、保険料を納付しなければなりません。
労災保険料を適切に納めている適用事業主が、本助成金の対象となります。
*…個人経営の農業・水産業で労働者数5人未満の場合等は除く。
②:業種・資本・労働者の範囲条件を満たしていること
次の表のいずれかに該当する事業主であることが必要です。
業種 | 資本・出資額 | 常時雇用する労働者 |
小売業(飲食店を含む) | 5000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
(参照:厚生労働省HP「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」)
③:テレワークを新規で導入・または継続して活用する事業主であること
テレワークに関して、以下のように取り組んでいる事業主が対象となります。
- テレワークを新規で導入する事業主であること(試行的に導入している事業主も対象)
- テレワークを継続して活用する事業主であること*
*…過去に本助成金を受給した事業主は、対象労働者を2倍に増加してテレワークに取り組む場合に、2回まで受給が可能。
支給対象となる取り組み
本助成金では、テレワークの導入・実施に関する取り組みにかかった費用が助成されます。
以下の取り組みから1つ以上を選び、実施しましょう。
- テレワーク用通信機器の導入・運用
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 労務管理対象者に対する研修
- 労働者に対する研修・周知・啓発
- 外部専門家(社会保険労務士など)によるコンサルティング
ここでは実施時に注意が必要な①テレワーク用通信機器の導入・運用について、解説していきます。
①:テレワーク用通信機器の導入・運用
テレワークに関連する機器の導入や運用は、支給対象になります。
具体的には次の通りです。
- シンクライアント端末(パソコン等)
- VPN装置* ・Web会議用機器
- 社内のパソコンを遠隔操作するための機器やソフトウェア
- 保守サポートの導入
- クラウドサービスの導入
- サテライトオフィス等の利用料
*…「Virtual Private Network」の略称で、セキュリティに強い通信環境を整えるための仮想専用回線のこと。
シンクライアント以外のパソコン・タブレット・スマートフォンの購入費用は対象にならないので、十分注意しましょう。
かかった費用が分かる領収書などは、交付・支給申請時に必要になるので保管するようにしてください。
成果目標と評価期間
本助成金では、助成にあたって達成すべき成果目標と評価期間が設けられています。
評価期間内に成果目標を達成できるかどうかは、助成額の決定に関わる重要な部分です。
より多くの助成金を受け取るためにも、目標の達成を目指しましょう。
成果目標
本助成金の支給対象となる取り組みを実施する際に、評価期間内で以下2点の成果目標を両方達成することを目指しましょう。
- 対象労働者全員に1回以上、テレワークを実施させる。
- 対象労働者がテレワークを実施した回数の週間平均を、1回以上とする。
成果目標の達成状況を確認するには、Excel形式の集計表*の利用が便利です。
集計表は支給申請時に必要になるので、書類として整えておきましょう。
*…クリックするとダウンロードが始まります。
評価期間
成果目標を達成できたかどうかは、事業実施期間(交付決定の日から令和3年2月15日まで)の間の、1ヶ月から6ヶ月の期間で設定する評価期間で判断します。
評価期間は申請者が事業実施計画を作成する際に、自ら設定することが可能です。
助成額
本助成金は支給対象となる取り組みの実施にかかった費用のうち、対象経費に該当する金額に対して助成されます。
助成額は成果目標の達成状況によって決まるので、状況ごとの助成額を把握しておくことが重要です。
助成額について、次の流れで確認していきましょう。
- 目標達成状況ごとの補助率・上限額
- 対象経費
- 助成額の計算方法
目標達成状況ごとの補助率・上限額
評価期間内に目標を達成できるかどうかで、助成額の補助率・上限額は下記のように変わります。
成果目標の達成状況 | 達成 | 未達成 |
補助率 | 3/4 | 1/2 |
1人当たりの上限額 | 40万円 | 20万円 |
1企業当たりの上限額 | 300万円 | 200万円 |
より多くの助成額を受給できるように、目標の達成を目指しましょう。
対象経費
本助成金の対象になる経費は、下記に該当するものです。
対象経費 | 例 | 備考 |
謝金 | テレワークの導入に関する専門家への相談費用費用など | 契約形態が、リース契約・ライセンス契約・サービス利用契約などで評価期間を超える契約の場合は、評価期間にかかる経費のみが対象となる。 |
旅費 | 事業で必要になった電車・バス・タクシー代・宿泊費用など | |
借損料 | 会議会場使用料や事務機器のリース料など | |
会議費 | 会議用のお茶・お菓子・弁当代など | |
雑役務費 | 事務作業にかかった費用など | |
印刷製本費 | 印刷や製本を、外部の業者に依頼した場合に支払う費用 | |
備品費 | 少額(10万円以上20万円未満)であり、耐用年数が1年以上の物品の購入に係る費用 | |
機械装置等購入費 | テレワーク用通信機器の購入費など | |
委託費 | テレワーク用通信機器の設置・設定費など |
(参照:厚生労働省作成リーフレット「働き方改革推進支援助成金」のご案内(テレワークコース))
助成額の計算方法
助成額は、対象経費の合計額×補助率で求めることができます。
助成額 | 備考 |
対象経費の合計額×補助率 |
助成額が上限額を超える場合は、下記いずれか低い方の額となる。
|
<ある企業で400万円のテレワーク用機器を導入し、対象労働者が10人の場合>
- 成果目標達成の場合 →400万円×3/4=300万円を助成
- 成果目標未達成の場合 → 400万円×1/2=200万円を助成
申請手続きの流れ
本助成金を申請する際に、会社側が行う手続きの流れは次の3ステップです。
- 交付申請
- 事業実施および評価期間
- 支給申請
①:交付申請
テレワーク相談センターに、事業計画書を添付した交付申請書を提出します。
交付申請時の必要書類は、こちらからダウンロード*が可能です。
*…クリックするとダウンロードが始まります。
交付申請書の提出は令和2年12月1日までとなっていますが、早めに締め切られる可能性があるので余裕を持って提出しましょう。
②:事業実施および評価期間
交付申請後、厚生労働省から交付・不交付の決定通知が届きます。
交付の通知を受け取ったら、下記の取り組みを実際に行いましょう。
- 事業の実施(機器の購入・研修の実施など)
- テレワークの実施(評価期間1~6ヶ月間)
③:支給申請
支給申請書をテレワーク相談センターに提出します(受付期限令和3年3月1日)。
支給申請時の必要書類は、交付申請と同様にこちらからダウンロード*が可能です。
*…クリックするとダウンロードが始まります。
支給申請書は、評価期間終了日から1ヶ月以内または3月1日のいずれか早い日までに提出してください。
その後、厚生労働省より支給・不支給の決定通知が届き、支給決定の場合は助成金を受け取ることができます。
テレワークコースを申請して、柔軟に働ける会社へ!
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)について、下記の順に解説してきました。
- テレワークコースの内容
- 支給対象となる取り組み
- 成果目標と評価期間
- 助成額
- 申請手続きの流れ
さまざまなコストが懸念されるテレワークですが、助成金があればスムーズに導入できます。
次の機会に余裕をもって申請するために、少しずつ準備を始めてみませんか?
テレワークに関する社内ルールづくりなど、弊所がお手伝いします。
柔軟な働き方ができる会社を目指して、できることから取り組んでいきましょう!
※次の申請に向けて、本記事でしっかり予習しておきましょう♪