「会社設立時の役員報酬ってどうしよう?」

役員報酬というのは、1度決めてしまうと変更するのに手間と労力がかかります。

できれば最初からビシッと適正額を定めたいですよね。

この記事では「創業時の役員報酬の悩みに終止符を打つ」べく、詳細に解説していきます。

もう、役員報酬で悩まなくていいんだね!

役員報酬を経費にするルール

役員報酬は損金不算入です。

つまり会計上は費用となるものの、税法上は損金にならず経費にできません。

ただし例外があり、条件さえ満たせば役員報酬を経費にすることも可能。

役員報酬を経費にするための条件は6つあります。

①定期同額給与 毎月一定の時期に定額で支払われる報酬は経費にできる
②事前確定届出給与 事前に税務署に届出をして、その届出の内容通りに支給される報酬は経費にできる
③利益連動給与 利益に応じて支払われる報酬は経費にできる
④役員退職金 役員の退職金は経費にできる
⑤ストックオプション 現金の代わりに支給される自社株は経費にできる
⑥使用人兼務役員の賞与 取締役部長など使用人兼務役員の場合、賞与を経費にできる

会社設立時の社長が毎月の役員報酬を経費にしたいのであれば「定期同額給与」の条件を満たしましょう。

「定期同額給与」の条件を満たしつつ役員報酬を決める際は、大前提として以下の2つを覚えておいてください。

  1. 報酬額は毎月同額
  2. 報酬額の変更は、会社設立時(翌期以降は事業年度開始)から3ヶ月以内のみ可能

会社設立1年目は、どれくらい利益が出るのか予想できない中で、毎月同額の役員報酬を決めなければならず判断が難しいです。

節税のためには役員報酬を経費にするべきですが、経費算入の条件を満たすには詳細なルールあるため専門家である税理士に相談するのが得策です。

【節税のコツ①】役員報酬を決めるときのジレンマ

役員報酬を決める際にはジレンマがあります。

  • 役員報酬は高く設定すれば社長個人の所得税が高くなる
  • 役員報酬を低くすれば法人税が高くなる

仮に初年度の利益が2,400万円だったとしましょう。

このとき役員報酬をいくらにするかによって、税額が約280万円も変わってきます。

なお税額のシミュレーションに関しては、コチラをご参照ください。

役員報酬を決めるにあたり、下記の5つの金額に配慮しながら会社の利益と社長の報酬のバランスを考えましょう。

  1. 会社の利益にかかる法人税
  2. 個人の所得にかかる所得税
  3. 住民税
  4. 厚生年金
  5. 健康保険料

もし急な資金需要がない場合は、月々の役員報酬を減らして、退職金というカタチで受け取ることで節税する方法もアリ。

退職金は所得税法上優遇されているので、手取額を増やせます。

【節税のコツ②】所得の分散で節税できる

所得税の税率は超過累進課税

つまり社長1人で高額の役員報酬をもらっていると必然的に税金が高くなります

しかし所得を分散させることで節税をすることが可能です。

あなたの配偶者や自分の両親を役員にして、役員報酬という形にして所得を散らすことをオススメします。

役員報酬を決める前に知っておくべき6つのポイント

役員報酬を決める前に、以下の6つについては必ず知っておきましょう。

  1. 会社設立時に適した役員報酬
  2. 役員報酬を決める流れ
  3. 役員報酬の決め方
  4. 退職金には税金も社会保険もかからない
  5. 役員報酬決定後の手続き

いずれも必須の知識ですので解説していきます。

ポイント①:会社設立時に適した役員報酬

会社設立時に適した役員報酬

会社設立時に決めておく経費削減に適した役員報酬は定期同額給与で、定款で定めておくか株主総会で決定。

役員報酬は事業年度ごとに決定し、期首から3ヶ月以内に1回だけ役員報酬を改定できます。

改定のチャンスは1回のみ。

毎月決まった額で計上

役員報酬は法人税法により、毎月決まった額(=定期同額給与)にしなければなりません。

事業規模によりますが、役員報酬の相場は100万円ぐらいでしょう。

定額以外で払うと、一番低い月を基準にそれより多い部分を会社の経費にすることはできません

役員報酬は期首から3ヶ月以内に1回しか変更できない

役員報酬は1度決めたら、会社設立時(翌期以降は事業年度開始)から3ヶ月以内をに1回しか変更できません。

たとえばあなたが起業して役員報酬を60万円に決めたら、その後原則1年間は60万円のままです。

半年後に売上が大きく跳ね上がり、ボーナスとして100万円を追加して合計160万円を役員報酬として渡す場合、100万円の部分は経費として認められません。

一度決めた役員報酬は、次の事業年度までは変えられないということを覚えておきましょう。

3ヶ月ルール違反のペナルティ

会社設立時(翌期以降は事業年度開始)から3ヶ月を超えてからも役員報酬額の変更は一応可能です。

ただし法人税の計算上でペナルティが発生。

支払った役員報酬のうち、毎月同額(定期同額)でない部分が法人税の計算上で経費として認められなくなってしまいます。

ポイント②:役員報酬を決める流れ

役員報酬を決める流れ

役員報酬を決める際は、

①売上予測を立てる

②利益の予想額を算出

③利益の予想額から役員報酬の適正額を考える

という流れで進めていきます。

役員報酬の決め方は、経営方針やお金の分配に対する考え方によって変化。

金融機関からの融資を受けることを考えている場合や、会社に利益を残して経営の安定化を図りたい場合などは、役員報酬を抑えて“黒字”を目指しましょう。

一方、個人で住宅を購入したい場合などは、役員報酬をできるだけ高くするのが得策です。

ポイント③:役員報酬の決め方

役員報酬は起業直後の会社にとって、たいてい最も大きな費用です。

役員報酬の設定額によって、会社が納める法人税やあなた個人で納める所得税が大幅に変化

例えば初年度の利益が2,400万円の場合、役員報酬をいくらにするかだけで支払う税金の額が約280万円も変わってきます。

ここでは、下記3つのパターンについて解説します。

  1. 会社の黒字額を大きくする
  2. 社長自身の収入を大きくする
  3. ESG指標を活用する

役員報酬の決め方

【テクニック1】銀行からの融資を受けたいなら“黒字前提”の役員報酬にする

初年度から“黒字”を叩き出せる敏腕経営者は多くないですが、銀行から融資を受けたければ黒字を目指して役員報酬を設定しましょう。

役員報酬をとるということは会社の利益が少なくなるということなので、銀行からの資金調達を考える場合は、決算書の見栄えが悪くなるということにもなりかねません。

そのため1年目は日本政策金融公庫制度融資など、実績がなくても融資してくれる制度を利用したほうが賢明でしょう。

しかし会社設立から1年後、会社の決算(実績)が出てくると決算がどうだったか?」ということが、大きな判断基準になってきます。

つまり銀行側はあなたの会社が「貸したお金を返済できるか?」を調査しているということ。

融資申し込みの際に決算書を用意して過去の財務状況や将来の事業計画を説明することで、会社の借入金返済能力を説明していくことになります。

融資を想定した事業計画をお持ちなのであれば、会社の利益を優先させる役員報酬の額にするのが得策です。

【テクニック2】役員報酬の最低金額

役員報酬には社会保険の負担額がつきまとうため、報酬額は“最低でも6万円ぐらい”にしましょう。

法人である以上、社会保険の加入は必須。

社長も役員様も例外ではありません。

社会保険料は健康保険料(介護保険料)厚生年金保険料で構成され、会社と従業員がほぼ折半で負担します。

たとえば役員報酬が30万円の場合、個人負担で約4万円ほど発生。

社会保険料を減らすためにも、なるだけ役員報酬を下げたいところですが、ここに落とし穴があります。

社会保険料は月額の金額に応じて変わってきますが、役員報酬を0にしても社会保険料は0になりません

月額報酬63,000円までの場合も、1万円強の個人負担が発生。

社長が個人で会社に支払わなければなりません。

役員報酬は0にするよりも6万円あたりに設定するのがオススメです。

パターン①:会社の黒字額を大きくする

設備投資が必要で金融機関からの資金調達したいときは、会社の財務状況を良く見せるため、会社に利益が多く残るように役員報酬を決めましょう。

創業初期の段階から役員報酬を多額に設定しても結局、出資金から自分たちの給料を払うことになってしまいますからね。

2期目以降の資金調達を上手く進めるために、役員報酬を低く設定して計画的に“黒字”を実現するのは賢い選択と言えます。

1期目が黒字だと、2期目は“ドヤ顔”で銀行に行けるね!

パターン②:社長自身の収入を大きくする

個人所得を最大化して個人で自由になるお金をできるだけ確保したいときは、社長自身の収入を大きくしましょう。

例えば、個人で住宅ローンを組みたい場合などは、所得を一定確保することが必要になります。

基本的には役員報酬を増やせば増やすほど個人の所得は増加。

ただし、所得税率は所得が増えるほど税率が上昇する仕組みですので会社・個人トータルでは損をする可能性があるため注意が必要です。

パターン③ : ESG指標を活用する

ESG指標とは、企業が取り組むべき課題を示す言葉です

「環境(Environment)」、「社会(Social)」「企業統治(Governance)」の頭文字を取って名付けられました。

気候変動など多くの社会的課題を鑑み、企業はこの3要素についての取り組みを行うべきという考えが広まりつつあります。

具体的な取り組み例は下記の通りです。

  • 環境…二酸化炭素排出量の削減など、環境汚染の防止
  • 社会…職場環境における男女平等など、労働環境や多様性に対する配慮
  • 企業統治…情報開示や法令遵守など、経営の透明性を上げる企業統治

これらに即した項目や目標値を設定して指標とし、その達成度を役員報酬の額に反映させることで、環境や社会問題に配慮する意識を経営陣に根付かせることができます。

将来的に上場や拡大を考えている経営者の方は、ぜひESG指標についても頭にいれておいてください。

ポイント④:退職金には税金も社会保険もかからない

退職金は税金的にも社会保険的にもオススメの受け取り方。

税金面では退職所得控除があります。

退職所得控除額の計算方法は、下表のとおり。

勤続年数控除額
20年以下40万円×勤続年数
(80万円未満=80万円)
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)

例:勤続年数が15年の社員の退職所得控除額は?

40万円×15年=600万円

つまり、退職金が600万円までは実質非課税!

もし退職所得控除額を超える退職金をもらったとしても、退職所得の計算は…

  • (源泉徴収前の収入金額ー退職所得控除額)×1/2

上記のように算出するため、退職金として受け取ったほうが節約になります。

【ちなみに…】800万円を受け取った場合

15年間働いた社員の退職所得控除額は?

ポイント⑤:役員報酬決定後の手続き

役員報酬のルールを理解して、株主総会(社員総会)で役員報酬の決議を行うと役員報酬の金額が決定されます。

しかし手続きは引き続きありますのでご注意ください。

年金事務所や市区町村に届出するなどの手続きがあります。

詳細はコチラから連絡してみてくださいね。

役員報酬を決めるときの注意点

創業時、役員報酬を決めるときに注意点が6つあります。

  1. 奥様への給与
  2. 報酬の額を大きくしすぎない

詳しくは以下の解説をご覧ください。

注意点①:奥様への給与

会社に利益が大きく出たので工夫して節税をしたいと考えた時、従業員の給与の調整は最もとっつきやすい手段。

しかし奥様に給与を渡そうと考えているのであれば注意が必要です。

奥様の場合は従業員として給与を渡した場合も、役員と同じルールが適用。

つまり奥様は“みなし役員”とされ役員報酬が支払われるため、途中から増やした分の給料は経費精算できません

奥様への給与

<例:会社を立ち上げて奥さんを役員にしなかった場合>

奥さんには普通の従業員として事務作業を行ってもらうとします。

奥さんの創業時からの給与は毎月25万円。

売上が順調に伸びたため、半年後から奥さんに50万円の給与を与えようとします。

しかし妻はみなし役員となりますので、25万円の役員報酬を動かせません。

つまり、差額の毎月25万円は経費に出来なくなります。

奥さんも頑張ってるのに、つらいね…

注意点②:報酬の額を大きくしすぎない

役員報酬を決めるとき、報酬の額が大きくなればなるほど

  • 所得税
  • 社会保険料
  • 住民税

も高くなるので、注意が必要です。

とりわけ社会保険料の半分は会社負担

月給ベースで100万円ぐらいだと、社会保険の会社負担分まで入れると年500万円以上持っていかれてしまうことになります。

複数の役員に対して多額の役員報酬を与えると、その分だけ個人の負担はもちろんのこと、会社が負担する社会保険料も大きくなります。

高すぎる役員報酬の設定はしないよう、慎重に行いましょう。

【極論】役員報酬を受け取らない

極論ですが役員報酬で受け取らずに月100万円×12カ月を会社に残したとします。

すると法人税は465万円となり*60万円程度の節税が可能。

さらに節税と同時に会社に利益を残せるため、財務状況を“健全”に見せやすく銀行から融資を受ける場合にも有利です。

*役員報酬をゼロにしても1万円強の社会保険料がかかるため、役員報酬は少なくとも6万円程度にするのがオススメです。

【一口メモ】会社の昇給が7月に多いワケ

昇給を7月にすると、昇級後においても昇級前の標準報酬が使え、社会保険料で少し得することが多くなります。

社会保険は4、5、6月の3カ月の平均給与を元に計算する算定基礎によって、1年分の保険料が決まる仕組み。

また、決まった保険額から2等級以上あがったら、社会保険の改訂の届けを出さなくてはいけない決まりです。

2等級というと1万円~12万円ぐらいの差額がありますが、昇給を7月にすることで社会保険料が上がるのを1年遅らせることが可能。

社会保険料は会社と従業員が折半して納めることになるため、会社側も社会保険料が少ない方が得です。

昇給の時期を工夫すれば、出費を抑えられるんだね!

役員報酬を途中で変更する方法

役員報酬は事業年度のはじめから3カ月を過ぎると変更不可ですが、例外的に事業年度の途中で役員報酬を調整できるケースもあります。

  1. 役員報酬が増額できる場合
  2. 役員報酬が減額できる場合

それぞれ見ていきましょう。

【一口メモ】役員報酬を変更するときは議事録が必要!

株式会社で役員報酬の変更を行う場合には臨時株主総会を開催するなど、株主総会で決議を行って議事録に残すことが必要。

議事録がなかったり役員報酬の変更理由が妥当でない場合、税務調査の際に役員報酬が経費算入できなくなったり、追加課税を受けることになります。

役員報酬を変更できるタイミングは?

役員報酬を変更できるタイミングは、原則として期首(事業年度開始日)から3ヶ月以内です。

3月決算の法人であれば、4~6月の3ヶ月のうちに変更する必要があります。

この時期を逃してしまったら、一般的には役員報酬を次の決算月の翌月まで同じ水準で維持しなければいけません。

4ヶ月目以降に変更することも可能ではありますが、その場合は役員の職制変更などの例外を除いて損金算入ができなくなり、余分な税金が発生してしまうので注意しましょう。

方法①:役員報酬が増額できる場合

役員報酬の増額ができるケースは常務取締役が専務取締役に昇格するなど、仕事の責務が増えた場合に限定。

定款で定められた役員報酬総額の支給限度額内であり、不当なほどに高額でないことが条件です。

方法②:役員報酬が減額できる場合

売上が予測を大きく下回り経営状態が悪化していれば、役員報酬は減額可能。

役員報酬の減額が認められるケースは4つあります。

  • 業績悪化によって役員報酬の減額がやむを得ない
  • 資金調達先の銀行と借入金について協議を行った結果、役員報酬の減額がやむを得ない
  • 業績悪化の際、取引先への信用を保つために役員報酬の減額がやむを得ない
  • 会社の役員が不祥事を起こした際、会社の社会的信用を失墜させないよう、懲戒的に役員報酬の減額がやむを得ない

いずれの場合も、役員報酬が減額できるのは「やむを得ないときだけ」になりますが、いざという時には会社を守る“最後の切り札”になりますので、頭の片隅に入れておきましょう。

いざという時は、役員報酬を下げてピンチを乗り切ろう。
役員報酬を変更したらやること

役員報酬を変更したら損金として算入するために、下記のような書類を提出します

書類名 提出先 提出期限 備考
事前確定届出給与に関する届出書 管轄税務署 株主総会の日から1ヶ月を経過する日まで 必ず提出
被保険者報酬月額変更届 管轄年金事務所 固定的賃金に変動または賃金体系に変更があった月から4ヶ月目(改定月)にすみやかに提出する 変更前から標準報酬月額に2等級以上の開きが出た場合に提出

期限内にしっかりと手続きしましょう。

【会社設立時の役員報酬】Q&A

役員には賞与を支給できるの?

役員賞与を支給することはできますが、会社設立時は2ヶ月以内(翌期以降は事業年度開始から4ヶ月以内)に税務署に届出をするなどの厳格な手続きが必要となります。

 

役員賞与(ボーナス)は経費になるの?
役員賞与は経費になりません。社長の報酬として、役員報酬と役員退職金は経費にできる一方、役員賞与は不可能。
社長が多くの報酬を得たいときは、役員賞与ではなく役員報酬にすることで節税が捗ります。

戦略的な役員報酬設定をしよう

この記事では役員報酬を決めるための判断材料を提供させて頂きました。

役員報酬設定は会社の経営に直接的な影響を与えるのはもちろんのことですが、

  • 銀行からの融資
  • 個人でのローン組み

などにも強く関与します。

あなたの中期的なビジョンを再確認しつつ、戦略的に設定しましょう。

すべての数字には意味があるのさ。

※成功している社長の多くは“即座のアウトプット”が習慣です。

いつ書くのー?今でしょー♪

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