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効果から手続きまで【労使協定】を丸ごと知って社内ルールを整備!

会社のルールとなる取り決めは複数あります。

その中でも労使協定は、法令の決まり労働現場のギャップを埋める大切なルールです。

労働者の権利を保護しながら業績アップを図るには、労使協定への理解が欠かせません。

労使協定の効果や手続きを知って、社内ルールを整備しましょう!

目次

労使協定とは?

労使協定とは?

労使協定とは、会社社員書面により結ばれる協定のことです。

「労使協定」は法律で定められている言葉ではなく、一般的に下記の要件を満たす協定を労使協定とみなします。

当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定

   (引用:労働基準法第36条)

労使協定は、労働基準法育児・介護休業法など、さまざまな制度において締結が可能です。

ただし無制限に締結できるわけではなく、労働基準法においては上記の要件が記載された14項目にのみ許可されています。

適用範囲が定められていない限りは、その会社で働く全社員に適用されます。

中でも36(サブロク)協定は、代表的な労使協定です。

労使協定の効果 

労使協定は簡単に言うと、労働基準法の例外を認めるためにできたものです。

労使協定の締結により、法令の定めと実際の労働現場とのギャップを埋めることができます。

しかし労使協定を定めても、その労働条件に従って仕事をしなければいけない権利義務(規範的効力)は生じません。

このように労使協定には労働者への強制力こそありませんが免罰的効力は持っています。

 

免罰的効力とは?

免罰的効果とは?

免罰的効力とは、「労働基準法や育児・介護休業法などで禁止されている事項であっても、罰則を受けない」という効果のこと。

例えば労働基準法36条に基づく36協定は、法定労働時間を超えた労働を行う際に必要な労使協定です。

法定労働時間を超える労働は労働基準法で禁止されており、違反すると罰則を受けます。

しかし36協定を締結し、正しく手続きをすれば、この協定の範囲内で法定労働時間を超えて労働させても罰則を受けることはありません

このように労使協定の免罰的効力によって、あらかじめ労使協定を締結しておけば、法律に反した場合でも処罰を回避できるようになります。

労使協定の位置づけ 

会社のルールとなる取決めには、労使協定以外にも下記のようなものがあります。

  1. 労働基準法
  2. 就業規則
  3. 労働協約
  4. 労働契約

それぞれの取り決めの主体・内容は次の通りです。

取り決めの名称 取り決めの主体 内容
①労働基準法 国会 労働条件に関する最低基準を定めた法律
②就業規則 使用者 労働者が遵守すべき労働条件の規則
③労働協約 使用者労働組合 使用者と労働組合が協議(団体交渉)し、労働条件等について合意した結果をまとめたもの
④労働契約 使用者労働者個人 使用者と労働者個人の間で取り決めた労働条件の契約

複数ある決まりの中での、労使協定の位置づけについて解説していきます。

 

労働協約について

労使協定と同じく、労働者の権利を保護する取り決めに労働協約があります

労働協約とは、下記の事柄について労働組合使用者書面で取り交わした約束事のことです。

  • 賃金・労働時間などの労働条件
  • 団体交渉・組合活動などの労使関係のルール

(参照:東京都TOKYOはたらくネット)

労働協約の締結には、労使にとって次のようなメリットがあります。

  • 労働者…一定の労働条件が保障されるため、安心して働くことができる
  • 使用者…労使関係の安定を維持できる

労使協定との相違点

労使協定との最も大きな違いとして、労働協約には使用者・労働者に対して民事的な権利義務を発生させる効力があります。

上記を含めた下記4つの相違点について、確認していきましょう。

  1. 人数要件
  2. 効力
  3. 効力の範囲
  4. 有効期限
相違点 労使協定 労働協約
①人数要件

・労働者の過半数で組織する労働組合

・労働者の過半数の中から投票や挙手などで選ばれた代表者

すべての労働組合(労働者の過半数に満たない労働組合であっても締結が可能)
②効力 免罰的効力 規範的効力債務的効力
③効力の範囲 定めのない限り、その会社で働く全労働者 締結した労働組合の組合員のみ*
④有効期限 法律上の制限なし 締結の日から上限3年間

*…締結した労働組合に事業場の3/4以上の労働者が属している場合は、組合員でなくても労働協約の効力を受ける

②において、労働協約は「規範的効力」「債務的効力」を持ちます。

  • 規範的効力

…労働条件・労働者の待遇について、使用者は労働協約で決められた基準を遵守しなければならない。

  • 債務的効力

…団体交渉のルールなど労使間の関係性の取り決めについて、労使双方とも遵守しなければならない。

 

労使協定の優先順位 

労働に関する取り決めにおいて、社内ルールに及ぼす効力の順番は下記の通りです。

労働基準法>労働協約>就業規則>労働契約

(参照:厚生労働省HP「労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)」)

(参照:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署資料)

上記4点は法的な権利義務を発生させる効力を持っています。

しかし労使協定は同様の効力を持たないので、上記と交えて優先順位を考えることはできません

労使協定はあくまでも労使間の約束事という位置づけになります。

そのため、規範的効力を持つ労働契約就業規則もあわせて定めることが重要です。

 
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労使協定の種類 

労使協定には様々な種類があり、労働基準監督署への届出必要なもの・不要なものがあります。

労働基準法において労使協定を締結できる14項目と、それぞれの届出の必要性を確認していきましょう。

 

届出が必要な労使協定 

労働基準監督署への届出が必要な労使協定は、下記の8点です。

条件を満たせば届出が不要になるものもあります。

労使協定の内容 労働基準法 備考
①社内預金に関する労使協定 18条  
②1か月単位の変形労働時間制 32条の2 就業規則に定めた場合は届出不要
③フレックスタイム制 32条の3 清算期間が1ヶ月を超えない場合は届出不要
④1年単位の変形労働時間制 32条の4  
⑤1週間単位の非定型的変形労働時間制 32条の5  

⑥時間外労働・休日労働

(通称:36協定)

36条 労働基準監督署長への届出が効力発生要件となる唯一の労使協定
⑦事業場外労働に関する労使協定 38条の2 事業場外労働が法定労働時間内の場合は届出不要
⑧専門業務型裁量労働制 38条の3  

届出の義務を怠ると労働基準法違反となり、30万円以下の罰金を科せられる可能性があるので注意しましょう。

 

届出が不要な労使協定 

労働基準監督署への届出が不要な労使協定は、下記の6点です。

労使協定の内容 労働基準法
⑨賃金の一部控除に関する労使協定 24条
⑩一斉休憩の適用除外に関する労使協定 34条
⑪代替休暇制度導入に関する労使協定 37条
⑫年次有給休暇の時間付与に関する労使協定 39条
⑬年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定 39条
⑭年次有給休暇中の賃金に関する労使協定 39条

 

 
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会社と労使協定を結ぶ相手 

会社と労使協定を結ぶ相手

会社と労使協定を結ぶ相手は、労働者側の存在です。

具体的には、下記のいずれかになります。

  • 労働者の過半数で組織する労働組合
  • 労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者

(参照:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署資料)

それぞれが会社と労使協定を結ぶための条件を、詳しく解説していきます。

 

労働組合 

労働組合

労使協定を結べる労働組合の条件は、事業場に使用されているすべての労働者の過半数で組織されていることです。

すべての労働者とは正社員だけでなく、パートアルバイトなどを含めたあらゆる雇用形態の労働者を指します。

すべての労働者の過半数で組織されている組合でないと、労使協定は結べません。

 

過半数代表者

過半数代表者

労使協定を結べる過半数代表者の条件は、下記の3点です。

  • 労働者の過半数を代表していること
  • 過半数代表者を選出することを明らかにした上で、投票・挙手などにより選出すること
  • 管理監督者でないこと

(参照:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署資料)

管理監督者とは、労働条件の決定や労務管理について、経営者と一体的な立場の人を指します。

管理監督する権限を持った人が過半数代表者にならないように、会社側でもよく確認しましょう。

 

過半数代表者の選出方法 

過半数代表者の選出方法

過半数代表者の選出方法として認められているものは、次の通りです。

  • 投票
  • 挙手
  • 労働者の話し合い
  • 持ち回り決議(書面上での決議)

(参照:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署資料)

 いずれも、下記の点を踏まえて行いましょう。

  • 民主的な手続きであること(労働者の過半数がその人の選任を支持していることが明確)
  • 雇用形態を問わずすべての労働者が選出に参加していること

会社の代表者が特定の労働者を指名するなど、使用者の意向により過半数代表者が選出された場合、その労使協定は無効になります。

 
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労使協定の手続き 

労使協定の手続き

労使協定を締結するための具体的な手続きは、下記の流れで行いましょう。

  1. 書類の作成・届出
  2. 労働者に周知させる
  3. 労使協定書の保存

 

①:労使協定書の作成 ・届出

労使協定書は、作成・労働基準監督署への届出保管1事業所*ごとに必要です。

労使協定書に盛り込む内容は各労使協定で異なり、様々な様式・文面の労使協定書が存在します。

厚生労働省HPで公開されている、労使協定書の書式雛型を参考にして作成しましょう。

労働基準監督署への届出が必要な労使協定の場合は、届出ることを忘れないようにして下さい。

*…原則として各々の支店・店舗・工場が、1つの事業所になる。

 

②:労働者に周知させる

労働基準法第106条より、使用者には締結した労使協定を労働者に周知させる義務があります

周知方法は下記3点のいずれかから選び、実施しましょう。

  • 常時各作業場の見やすい場所に掲示するか備え付ける

…提示または備え付けた場所も周知する。

  • 書面で労働者に交付する

…内容を変更した場合はその都度交付する。

  • 磁気テープ・磁気ディスクなど記録した上で、各作業場に労働者が当該記録の内容を常に確認できる機器を設置する

…パソコンなどから簡単に閲覧できるようにする。

(参照:三条労働基準監督署資料)

 
 

③:労使協定書の保存

労使協定書は、労働基準法第109条「賃金その他労働関係に関する重要な書類」に該当します。

そのため、下記の保存期間をしっかり守りましょう。

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新型コロナウイルス関連の助成金を受ける際に必要な労使協定

厚生労働省は2020年4月1日から、新型コロナウイルスに関する雇用調整助成金の特例措置を拡大する方針を公表しました。

雇用調整助成金とは、会社・個人事業主が支払う休業手当額の一定割合を政府が助成するための助成金です。

受給には労使協定を締結し、必要書類に添付して提出する必要があります。

労使協定で最低限決定すべき内容は、下記の4点です(休業の場合)。

  1. 休業の実施予定時期・日数
  2. 休業の時間数
  3. 対象となる労働者の範囲及び人数
  4. 休業手当額の算定基準

(引用:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク作成資料)

2020年4月1日~6月30日までは必要書類の事後提出が可能となっており、事前の提出がなくても休業等を実施できます

日々更新される情報をチェックしながら、労使協定の締結を進めていきましょう。

労使協定を適切に結び、働きやすい会社へ!

 労使協定について、下記の内容を解説してきました。

  • 労使協定とは
  • 労使協定の位置づけ
  • 労使協定の種類
  • 会社と労使協定を結ぶ相手
  • 労使協定の手続き

労使協定は免罰的効力という独特の効力を持ち、労働協約就業規則と連携させることでより効果的なルールになります。

 働きやすい会社づくりを目指して、労使協定を適切に整備しましょう。

労使協定書の作成や細かい手続きでお悩みなら、いつでも弊所までお問い合わせください!

 ※労使協定を締結して、働きやすい環境を整えよう!

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