
「そろそろ確定申告のシーズンだ…。」
「メリットの多い青色申告にしたいけど、難しそうだし…」
と確定申告シーズンが始まり、メリットの多い青色申告が気になる方。
そのメリットを受けるには、利用したい年の前年に申請しなければなりません。
計画的に変更するために、青色申告の基本事項を10個の疑問と共に紹介していきます。
※今回説明するのは、所得税に関する確定申告についてです。
- 青色申告って何?
- 私は青色申告対象者に当てはまる?
- 青色申告するメリットってある?
- 青色申告の控除額はどう違うの?
- 青色申告にもデメリットはあるでしょ?
- 青色申告ってどう利用するの?
- 青色申告を利用した場合の申告の流れは?
- 青色申告で確定申告するときに、必要な書類は?
- 青色申告をやめることはできるの?
- 青色申告と白色申告の違いは?
①:青色申告って何?
「青色申告」とは、個人事業主が確定申告をする時に、税制上優遇される申告方法です。
他には「白色申告」と言って、簡略的に申告することができる申告方法があります。
青色・白色を選ぶ前に「確定申告」という言葉自体に小難しさを感じるかもしれません。
まずは確定申告とは何なのかを、確認しておきましょう。
確定申告とは
確定申告とは、以下の手続きに基づき、税金を納付することを言います。
- *1月1日~12月31日までの1年間の売上や経費を集計
- それを確定申告書類としてまとめる
- 翌年の2月15日~3月15日(土日祝にかかる場合は前後あり)までに税務署に申告
*1月1日~12月31日…もし5月の中旬などに開業した場合は、開業日~12月31日までの売上や経費を集計して申告。
②:私は青色申告対象者に当てはまる?
まず確定申告が必要になるのは、売上から経費を差し引いた所得金額が以下の金額以上の方です。
- 事業による*所得が38万円以上
- 副業による所得が20万円以上
そして金額が当てはまった方の中で、以下3種類のいずれかの所得があった場合は、青色申告対象者に該当します。
- 事業所得…八百屋・カフェ・農業など
- 不動産所得…マンション収入・駐車場管理など
- 山林所得…山林伐採・立木のまま譲渡
しかし事業所得と認められず、*雑所得だと判断されると、青色申告は利用できません。
*雑所得…他の所得に含まれない所得(例:サラリーマンの副業所得)
③:青色申告するメリットってある?
青色申告には、所得税額を減らしてくれるメリットが5つあります。
- 10万円~65万円の控除を利用できる
- 赤字の繰り越しができる
- 家族に支給した給与を経費にできる
- 30万円未満の減価償却資産を一括で経費にできる
- 貸倒引当金を経費にできる
それぞれどのような効果があるのか見ていきましょう。
①:10万円~65万円の控除を利用できる(青色申告特別控除)
売上から経費を引いた上でさらに10万円~65万円を差し引くと「所得」が減少し、納税額も減少します。
なぜなら所得税額は、「所得」に所得税率をかけて算出されるからです。
そしてその所得税率は、「所得」額が大きくなるほど、税率も大きくなる累進課税制度により決められます。
「所得」が小さければ税率も小さくなるので、納税額を抑えられるでしょう。
②:赤字の繰越・繰戻ができる(純損失の繰越控除)
もし今年が赤字だった場合、翌年以降に赤字を繰り越すことが可能です。
その翌年が黒字になったら、繰り越した赤字と相殺して「所得」を減らせます。
最長で3年間は赤字を繰り越せるので、赤字・黒字を上手く相殺できれば、納税額を大幅に抑えられるかもしれません。
また前年が黒字で今年が赤字だった場合、今年の赤字を前年に繰り戻し、所得税の還付を受けられます。
③:家族に支給した給与を経費にできる(青色事業専従者給与)
届出を行えば、家族に支給した給与を経費にできます。
ただし経費にするには、以下2つを押さえておかなければなりません。
- その家族が「青色事業専従者」として認められる条件を満たしている
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出
経費が増えることは「所得」を減らす効果があるので、納税額も減らせます。
④:30万円未満の減価償却資産を一括で経費にできる(少額減価償却資産の特例)
業務に必要な道具などを30万円未満で購入した場合、すぐ経費にできます。
10万円以上のモノは通常「減価償却資産」として計上し、数年かけて経費として計上しなければいけません。
しかしこの特例を利用して費用にできれば「所得」が減少し、納税額も減少させられます。
ちなみに特例が利用できるのは、2020年3月31日までに取得したものに限られるので、ご注意ください。
⑤:貸倒引当金を経費にできる
貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)は、事業上の売掛金・貸付金などが回収できないと想定される場合に、回収不能見込み額を計上するものです。
個別評価による貸倒引当金の繰入は、青色・白色関係なく認められているので、利用している方も多いかもしれません。
しかし青色申告では、一括評価による貸倒引当金を5.5%まで経費として計上することが認められています。
④:青色申告の控除額はどう違うの?
青色申告で控除される金額は、
- 10万円
- 55万円
- 65万円
に分けられており、その違いは条件を満たしているかどうかにより異なります。
基本的に条件に該当しない場合の控除額は10万円です。(例:簡易簿記や現金式簡易簿記で記帳している方、山林所得のみを得ている方)
ここからは55万円と65万円の控除を受ける条件について、2018年(平成30年)に行われた改正を踏まえて、説明していきます。
55万円の控除を受ける条件
55万円の控除を受けるための条件は次の3つ。
- 不動産所得・事業所得のどちらかを得ている
- これらの所得についての取引を複式簿記により記帳している
- ②に基づいて貸借対照表・損益計算書を添付し、控除を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出する
複式簿記とは1つの取引において、2つの側面から帳簿を記帳することです。
2つの側面とは現金・預金の出入りと、その目的や原因。
そしてその2つの側面を、貸方(右側)借方(左側)のどちらかに記入し、この両方を埋めることを「仕訳を切る」と言います。
(例:電車に乗って移動した→(貸方)交通費 1000円(借方)現金 1000円)
この作業を正規の簿記の原則に即して行うことが義務付けられているので、少なからず簿記の知識が必要でしょう。
65万円の控除を受けるには?【令和2年(2020年)分から適用】
令和2年(2020年)分からは、下記2ついずれかの条件も満たしていないと、65万円の控除が受けられません。
- その年分の仕訳帳・総勘定元帳を電子データとして保存している
- その年分の所得税をe-Taxにより電子申告している
①:その年分の仕訳帳・総勘定元帳を電子データとして保存している
1つ目の要件をクリアするには「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書」を帳簿の保存を開始する3ヶ月前までに提出する必要があります。
また電子データを保存する際は、以下の点に注意しましょう。
- 保存場所を、記帳代行業者の所在地ではなく、自社の所在地にする
- *電子帳簿保存法が定めている要件を満たす会計ソフトを使用する
- 帳簿を手書きで作成した場合の紙書類は含まれない
*電子帳簿保存法…コンピュータを使用して作成した帳簿や書類の電子データでの保存を認めている法律。以前までは紙保存が通例でした。
②:その年分の所得税をe-Taxにより電子申告している
電子申告とは、パソコンを利用してオンライン上で確定申告することです。
会計事務所に帳簿入力・確定申告を任せている場合は、すでにこの条件を満たしている方も多いでしょう。
個人で確定申告をしていて、これから電子申告をするか検討する方は、コチラで詳細をご確認ください。
⑤:青色申告にも、デメリットはあるでしょ?
青色申告のデメリットは手続きや処理の難易度が高く、手間がかかることです。
- 事前に申請が必要
- 青色申告の帳簿作成が複雑
- 確定申告書類の作成も難しい
複式簿記は簡易簿記に比べると複雑で、簿記の知識のない方にとっては難しく感じるでしょう。
また確定申告時に55万円の控除を受けるには、作成する書類の量も多くなります。
65万円の控除を受けるとなると、新たにいくつかの手続きが必要です。
しかしその点は税理士に依頼すれば、さほどデメリットを感じずに節税できるかもしれません。